萌鉄2000 パート3
「韓国 鉄道博物館」

鉄道博物館


 今回は趣向を変えて、鉄道博物館についてです。しかも、「韓国の」です。


 以前、ソウル駅の鉄道博物館を訪れたときに、いわゆる本館があることを知り、今回はそっちを訪れてみようということになった。
 場所は国鉄京釜線(キョンブソン)の富谷駅(プゴクヨク)の近く。

 京釜線は名前のとおりソウル(旧名:京城)と釜山(プサン)を結ぶ韓国の大幹線。超特急セマウル号も走る路線で、ソウル〜水原(スウォン)間は複々線になっており、本線は非電化でディーゼルの特急用、平行別線は電化された首都圏電鉄線となっている。電鉄線は地下鉄1号線と相互直通運転されており、大部分は地上を走るにもかかわらず、国鉄部分も含めて「地下鉄(チハチョル)」と呼ばれている。


 さて、では滞在地の最寄り駅である地下鉄5号線「松亭(ソンジョン)」から出発。
 富谷は地下鉄1号線なので、5号線と1号線が交わる駅で乗り換えればいいが、そうすると新吉(シンギル)になる。だが、2号線が短絡しているので、カチサン(漢字表記は無いらしい)で乗り換える。2号線は環状線になっているのだが、2つの枝線を持っている。カチサンからはちょうどその枝線のひとつが出ている。
 カチサンから枝線部分を乗り通し、環状線部分の新道林(シンドリム)へ到着。この枝線は環状線へ直通しておらず、乗り換えが必要である。
 ここで京釜線(地下鉄1号線)に乗り換える。地下鉄と呼ばれているが、当然、地上を走っている。
 新道林の地上ホームに出ると、複々線の別側をセマウル号やムグンファ号が駆けぬけていくのが見える。
 ここで下り方面の電車は3系統あり、目的の富谷を通って水原へ行くものの他、京仁線(キョンインソン)に乗り入れる仁川(インチョン)行き、安山線(アンサンソン)に乗り入れる安山行きとがある。
 電車の本数はとても多く、2〜3分おきに次々とやってくる。3本やりすごすとお目当ての水原行きが来たので乗る。


 韓国の地下鉄車内は活気に溢れている。日本の車両より幅が広く、ゆとりもある。そんなでか、毎回のように謎の演説者がおり、何かを訴えている(残念ながら言葉がわからない)。今回見かけたのは、なにやら新聞を持って熱演しているおっさん。車内をうろうろし、熱演が終わったかと思うと、座席に座っている人に片っ端から新聞を配って次の車両へと去って行った。新聞をもらった人の反応は様々で、熱心に読む人もいれば鞄に入れる人、そうかと思えば座席の後ろに捨てる人、子供なんかは紙飛行機を折りはじめる始末。うーむ。


 そうこうしているうちに、富谷へ到着。駅舎はモダンなレンガ作りだが、駅は大改造工事中で、改札は跨線橋の上にあった。
富谷駅
 駅前にはいろいろな店が並んでおり、小さな商店街を形成している。
駅を出て、右へ真っ直ぐ線路沿いに1km歩くと鉄道博物館へたどり着く。


 鉄道博物館(チョルドパクムルガン)
 博物館は館内と野外に大きく別れ、野外にはかつて活躍した保存車両が展示。SLを始め、旧型客車、ディーゼル動車(気動車のことね)、その他、保線用車両からナローゲージ客車まである。敷地の外周4分の1程度には線路が轢かれており、面したホームには単行の気動車が展示されており、その先には腕木式信号機まであり、警報機がついた踏切まである。まるで動きだしそうだ。
 入場料は500ウォン(約50円)。安い!!
鉄道博物館
 館内に入ると、そこは韓国の鉄道史を説明する展示物の数々がある。残念ながら解説文は読めないが、古ければ古いものほど漢字が多用されており、おそまつな韓国語の知識と組み合わせるとなかなかなんの、ある程度読めるではないか。
 韓国の鉄道史の中で特に興味深いのは日本時代のものである。日本が韓国を占領していた時代に製造されたものは日本語で書かれており、製造年月も「昭和何年」と記されていたりする。日本車輌製造など、見慣れた名前も見かける。
 しかし、年表に「日本国時代」などと書かれているのを見ると、それはそれで複雑な気分ではある。


 そんなこんなで見て回っていると、なぜか100系新幹線の模型がある。よく見ると「東海旅客鉄道株式会社 謹呈」と書かれている。また、「世界の鉄道」というコーナーのところにも300系新幹線の模型があったりと、JR東海との関係は密接のようだ。そうかと思うと、1/20スケールの巨大な783系の模型が出現。これはJR九州からの謹呈らしい。「世界の時刻表」のところには、あまりにもおなじみ過ぎる日本の時刻表が置かれていたりと、なかなか楽しい。
 また、もうひとつ興味深いのが、韓国鉄道が建設を進めている高速鉄道KTXだ。韓国の鉄道は、いわばすべてが在来線で、超特急セマウル号は最高速度130kmでソウル〜釜山間444.5kmが所用4時間10分である。ここに高速鉄道を建設し、ソウル〜釜山間を2時間以内で結ぶようだ。完成が楽しみである。
 そして「21世紀の鉄道計画」のコーナーには、KTXをシベリア鉄道へ乗り入れさせ、ヨーロッパと結ぶルートや、中国から南下してインドまで直通するルートなど、壮大な計画が展示されていた。日本人の感覚では、鉄道で国境を越えるのはいわばカルチャーショックである。実現するとすばらしいが、当面は北朝鮮の問題がある。元々は北朝鮮を抜けて中国まで線路がつながっていたのだが、民族分化によって線路も寸断されてしまったからだ。最近は首脳会談が実現するなど、南北問題に明るい兆しも見えてきた。南北が統一され、直通鉄道である京義線(キョンウィソン)と京元線(キョンウォンソン)の分断が解消される日が来ることを祈る。


 アトラクションの時間がやってきた。巨大な鉄道模型のレイアウトの運転ショーである。セマウル号、ムグンファ号、トンイル号をはじめ、電鉄、貨物などがレイアウトを駆けめぐる。途中、照明を消して夜を演出。車両ばかりではなく、建物のストラクチャーも淡い光を発し、美しい光景が繰り広げられた。時間にして10分程度。
 それが終わると、なにやらアナウンスがあり(もちろん内容はわからない)、観客が全員、野外の同じ方向へ向かっていった。後をついていくと、さきほどのホームに展示されている単行の気動車に次々と乗り込んでいるではないか。よく見ると、気動車のエンジンがパラパラとかかっている。なななななな、なにぃ〜、ううう動くのか?!動くようだ。狭い車内に半分満員電車(気動車だって)のようになりながら、なんでここへ来てラッシュを経験すんぢゃ、という思考をよそに、のそのそと気動車が動き出す。とはいえ、線路が200メートルくらいしかないことは確認済である。当然、すぐに止まり、そのまま折り返す。で、おしまい。あらら。でも、子供たちは大満足。そんでいいんかい。うーむ、動態保存していることには驚いたが、これでは現役の鉄道に乗るのとあまりかわりばえがしない。せめて敷地を一週するとか、それぐらいはないと。もしくはSLに牽引させるとか・・・。そういや、館内の案内図にはこの部分にSLが描かれている。元々はSLだったのだろうか。
 しかしまぁ、50円でこれだけ楽しめれば御の字も御の字。大満足である。


 さて、富谷駅へもどる。このまま帰ってもいいが、せっかくここまで来たので、電鉄線の終点、水原まで行ってみよう(はじまった〜)。

 さっきも書いたとおり、京釜線は水原まで複々線になっているが、電鉄線が出来たのは最近(といっても10年以上前だが)で、それまでは非電化の本線を各駅停車の列車が走っていたはずだ。そのため、本線上にもホームが残っている駅が多い。当然、そのホームは現在は使われておらず、草ぼーぼーだったり、半分朽ち果てていたりと、様々なありさま。しかし、本線のホームは客車仕様で低く、日本人にとってはとても懐かしい雰囲気を醸し出している。当然、特急停車駅の低床ホームは現役。すばらしい。


 で、水原。ここは電鉄線の終点で、当然、特急停車駅。電鉄線のホームは高いが、本線のホームは低い。
 水原に着いたが特に行くところはない。この駅はかの有名な韓国民族村への下車駅だが、今回は行くつもりはないので駅前をぶらぶらする。
水原駅前
 それにしても活気に溢れている。人も車もいっぱいである。街頭演説も盛んだし、歩道には露店が建ち並ぶ。このパワーは見習いたいところである。
 1時間ほど本屋に入ったりCD屋にいたりとで徘徊し、帰路に就くのであった。


セマウル号
 関係ないが、ここで特急について。超特急セマウル号、特急ムグンファ号、急行トンイル号、普通ピドゥルギ号という種別があり、これはどの路線でも同じ。運賃は日本のように乗車券と特急券のような分かれ方ではなく、列車種別によって1kmあたりの運賃が違う方式だ。大幹線はこの4つの列車が入り乱れ、路線の格が下がるにつれて、上から順に存在しなくなるようである。
 また、セマウル号をはじめとする特急、急行は原則的に全車指定席で、自由席は存在しない。そのため、特急に乗る場合は1週間前くらいから予約しなければならないのが普通であるらしい。水原の窓口に、2時間後のセマウル号の席があります、と書かれていた(我ながら、この程度の韓国語なら読めるようになった・・・えらいえらい)くらいだから、やはり飛び入りでは乗れそうにない(15分に1本の間隔で特急が走っているにもかかわらず、である。)。

 水原からセマウル号で帰ってやろう、というもくろみはあまりにもあっけなく崩れ去り、おとなしくへこへこと電鉄に乗り込むのであった・・・敗北ing。

 ・・・そこのあなた、「水原」は「みずはら」ではなく、「スウォン」と読むんですよ。間違えてない?

 萌鉄2000パート4へつづく。


戻る

萌鉄メニューへ戻る

トップページへ戻る